
恩師の野沢正光さんの本「野沢正光の建築 詳細図面に学ぶサスティナブルな建築のつくりかた」が先日出版されました。この本は事務所のOBが中心となり、企画や編集を担いましたが、主導してくれた先輩の廣谷純子さんと共に企画からお手伝いさせてもらった本で、出版まで長い道のりでした。時を経て魅力を増した「相模原の住宅」を写した表紙の写真が、この本の内容を物語っているようです。


この本は「複雑な全体を解く」「これからの建築を考える」という2つの章で構成されますが、建築の設計過程では普遍的なテーマです。野沢さんがそれらをどう考え、解いたかをわかりやすく伝えたくて、テーマごと分解して図面と写真や計測データなどを並べて紹介する事にしました。図面の見せ方として実施設計図として横長で描いていた図面はそのまま横長で紹介したいとの事で観音折の見開きページを設けてあり、出版社泣かせな贅沢なつくりです。

私が企画に参加するにあたって、影響をうけた本は「吉村順三のディテール 住宅を矩計で考える」でした。「いつも机の横において、何かに行き詰ったときの打開の手掛を見つけ出し得る本が欲しいと思った」と共著の宮脇檀さんがあとがきで書いていて、私の机の横にある本ですが、そのような本にしたいと思いました。矩計で考えるという部分は野沢さんの設計の進め方と重なります。掘り下げるテーマは異なっても宮脇さんが創った「居住空間デザインコース」で私が学んだ考えと、野沢さんの建築には通じるものがあると分解したテーマからも思うところがあります。宮脇さんがつないでくれた縁により野沢さんを師として修業させてもらい、恩師つながりでまた縁が広がり建築設計の仕事を続けてこれていると振り返り感慨深いです。